教師の意見
「教える」ということ。
実はとても難しいことです。
ただ知識を伝えるだけではいけない。
私たちは物心ついた時から様々なことを教えられて育つ。
教えられることには慣れていても、いざ教える立場になると戸惑う物です。
大学生のバイトとして今も昔も人気の家庭教師。
私も大学に入って、すぐに生徒を探しました。
当時はネットなんかありませんし、家庭教師派遣会社も多くない。
銀行などの掲示板にメモを貼るとか、出身校の先生に声を掛けておくなどして探すものでしたね。
私も先生にお願いして紹介してもらいました。
生徒は中学3年で、英語が芳しくないという話。
私は英語に関しては自信がありましたから、
確実に成績アップさせてやろう、と意気揚々でした。
お宅に伺い、親御さんから話を聞くと、他の科目はいいのに英語が…ということ。
まずは、と英語の小テストをやらせてみました。
芳しくない、というわりには単語もよく知ってるし、熟語、慣用句なども素晴らしい。
文法も理解してます。
ところが、読解となると、これが問題でした。
「この文の内容を表している説明に丸をつけろ」なんていう問題が壊滅状態。
これには困りました。
なぜ、出来ないのか?
しばらくは私も問題点がみつけられないまま教えていました。
単語も文法もわかるんだから、読解が出来ないはずがない、と。
また、私自身も小さな所でつまづいて、それが尾を引いた経験がありましたから、どこか基本でわかっていない点があるのではないかと色々探ったり。
それでも、やはり読解は進歩しませんでした。
しかし1ヶ月ほどたった時です。
問題集をやらせている間に彼の部屋を見回してたんですね。
いかにも男の子らしい部屋で模型などがあったんですが、あることに気づきました。
小説の類が無い?
本棚に雑誌や図鑑などはあるんですが、物語やマンガはほんの数冊。
「そういえば国語も苦手と言ってたな」と思い出した時に糸口が見えたような気がしました。
次の授業の時、私はジュブナイルのSF小説を一冊持っていきました。
そして、授業の最後、30分ほど読ませました。
特になにも聞かず、そのまま終了。
次に行った時、続きを読んだかどうか聞くと「読んだ、おもしろかった」と。
私は、用意していた別の本を渡す。
文学部ですから、本のセレクションは得意です。
これを3ヶ月続けました。
その間、授業は単語、文法といった彼が苦手としない物に集中。
そしていよいよ読解のテスト。
満点とは行きませんでしたが、読解問題も確実に伸びている。
この時は嬉しかったですね。
彼の問題は、長文の全体像を捉えられない。
英語以前に文章力が備わってない点だったわけです。
私が人に物を教えたのは彼が初めて。
幸いにも問題点を発見して、自分なりの方法で解決できたわけですが、教えるというのは本当に難しい。
教学相長とはよく言ったもんだ、と実感した体験でした。